大学選びのコツ
2021年度から大学入試共通テストが始まるなど、大学入試を取り巻く環境が大きく変化しています。この記事では最新の入試動向や世の中の流れなどを踏まえ、どのように大学選びを行っていけばいいのか、解説しています。
目次:
1.大学を取り巻く環境
皆さんは全国に大学がいくつあるかご存知ですか?
正解は、803校(文部科学省「学校基本調査 令和3年度(速報)結果の概要」より)です。毎年若干の増減はありますが、約800校で推移しています。そして、そのうちの約4分の3が私立大学です。
一方、大学進学者数については、18歳人口が減少しているため、進学者数は2017年をピークに減少していくとされていますが、大学(学部)進学率は令和2年度には54.4%となっています。この進学率は今後も上がっていくとされています。
つまり、子どもの数は減っているが、進学率は上がっているものの、人口は減っているので大学は学生募集に工夫をしなければならない、ということです。実際、私立大学で5割近くが定員割れをしているというデータがあります。
その一方で、相変わらず高い入試倍率の大学もあり、人気・知名度のある大学に入るのは容易ではありません。
文部科学省は「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」という高等教育の将来構想を記した資料の中で、大学は「知識の共通基盤」からさらに進んで、「知と人材の集積拠点」としての機能を持つべきであると明記しています。そして、将来の大学のあるべき姿を以下の通り示しています。
①研究力の強化
②産業界との協力・連携
③地域との連携
大学は、学内だけでなく社会と関わりを持ち、イノベーションを生み出していけるような場所を目指していかなければならないのです。近年の入試方式の多様化や試験内容の変更に影響しているのは、こうした社会の要請と無関係ではないのです。
参考文献:文部科学省「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」2017年、
文部科学省「令和2年度学校基本調査」2020年
2.最新入試動向
では、変化の中にある大学の入学試験はどうなっているのか。大学入試もまだ変化の途上にあります。中でも大きいのが次の3点でしょう。
- センター試験から共通テストへ
- 共通テストを活用する大学の増加
- 総合型選抜(旧AO入試)・学校推薦型入試の増加
- 英語外部試験の増加
センター試験から共通テストへ
2021年1月実施分から、これまでのセンター試験に代わって共通テストが行われました。当初、英語民間試験の活用と記述式問題の導入が掲げられていましたが、それらは「2025年からの実現は困難」として文科省が(いわば)諦めた形になります。こうした変更点はなくなりましたが、試験内容は変わりました。とりわけ英語は大きく変わり、例えば、これまであった発音・アクセント問題及び文法・語法問題がなくなり、筆記試験は読解問題のみとなりました。また、リスニングの配点が100点となり、しかも音声が1回しか流れないといったように、リスニングの比重がかなり大きい試験です。リスニングで流れる英語はこれまで
アメリカ英語が中心でしたが、イギリス英語やノンネイティブの英語も混じるようになっています(これはTOEICに近いと言えます)。英語以外の科目は現時点では大きな変化はありませんが、それでも「アクティブ・ラーニング」を意識した、暗記だけでは解けない問題が増えてきています。
共通テストを活用する大学の増加
そんな共通テストは国公立大受験者が受けるものと思われがちですが、私立大学でも活用する試験があります。これまでも「センター試験利用入試」という名前で行われてきました。単独型(共通テストの点数だけで合否が決まる、個別試験は受ける必要がない)と併用型(共通テストの点数と個別試験の合算で合否が決まる)があります。「共通テスト利用入試」は共通テストしか受けなくて良いので楽そうに見えるかもしれませんが、国公立大上位校の受験生がすべり止めで出願することも多く、難易度が高くなりがちです。
そして、共通テストを活用する大学が近年増加傾向にあります。例えば、上智大学での一般選抜は①TEAPスコア利用型(全学統一日程入試)、②学部学科試験・共通テスト併用型、③共通テスト利用型の3種類となり、これまで行ってきた独自の英語試験を廃止して(一部学部を除く)共通テストを利用した試験になりました。他にも、早稲田大学政治経済学部は一般選抜入試で、共通テスト受験(4教科4科目)が必須となりました。
共通テスト利用入試を実施する大学について注意しなければならないのは、共通テストを受験しないと2月の一般選抜に出願する資格がない私立大学が上位校を中心に増えていることです。これは、共通テストで高得点を取らないと2月の個別試験での合格が難しくなることを意味します。
総合型選抜(AO入試)・学校推薦型入試の増加
入学者選抜に占める総合型選抜(旧AO入試)の割合は年々増加傾向にあるものの、私立大学・国公立大学を合わせて約10%である。学校推薦型(公募・指定校)が占める割合は私立大学・国公立大学を合わせて約40%である。私立大学では入学定員の約半数が一般選抜以外の入試方式で合格しているため、私立大学を第一志望とする受験生はまず志望校が総合型選抜や学校推薦型入試を実施しているかどうかを調べておくこく必要があります。
国公立大学についても、総合型選抜・学校推薦型入試の比率を5割程度まで引き上げる方針を国大協(国立大学協会)を打ち出しているので、今後は国公立大学においても私立大学と同様に、受験機会が増えるようになっていくでしょう。
英語外部試験の増加
多くの大学で採用されているのが英語外部試験です。まず、英語外部試験について、説明しておきます。英語外部試験とは、英検やTOEIC、TEAP、IELTS、TOEFLなどの外部機関が行っている英語の検定試験を利用した入試(通称、外検入試)のことです。こうした検定試験の資格を所有していると、英語の点数に加点されたり、場合によっては英語の試験が免除されたりします。この英語外部試験を導入している大学は年々増加していますので、必ず押さえておきたいところです。
中でも、英検は最も受験がしやすく参考書も多いため、取得しやすい試験です。そして、「英検2級合格」というのが一つの目安と言われていますので、なるべく早い時期に英検2級を取得しておくと入試の準備も少し楽になります(英語外部試験については別記事で詳しく解説しています!)。
大学を選ぶときは「自分の志望大学・学部がどのような試験を採用しているのか」「何を勉強しなければならないのか」ということをきちんとリサーチすることが必要です。
3.大学の調べ方
ここまで大学の状況や最新入試動向についてお話してきました。
早速大学選びに取りかかりたいところですが、まずは“どんな大学があるのか”調べてみることが大切です。ここでは大学の調べ方を簡単に説明します。大きく分けて次の4つが挙げられます。
- HPで調べる
- イベントに参加する
- オープンキャンパスに参加する
- 先輩や先生から話を聞く
- HPで調べる
最近では当たり前になったインターネットで調べるという方法です。基本的に今は大学のホームページに行けば受験生が必要な情報はほぼ揃っています。まずは気になる大学のホームページを訪問してみましょう。ただ、この方法は大学名を知らないと調べることはできないですよね。
- イベントに参加する
「まだ知らない大学を知りたい」、「どんな大学があるのか一度にたくさん知りたい」という方は、大学フェアなどのイベントに参加してみましょう。会場で大学の担当者さんと直接話をすることができます。中には、受験に関する講演会やセミナー、個別相談ブースが設けられていることもありますので、機会があれば参加してみてください。
- オープンキャンパスに参加する
行きたい大学、興味のある大学がある程度しぼられたら、オープンキャンパスに参加してみてください。現在はコロナの影響もあり、オンライン実施の場合も多いですが、可能であれば実際にキャンパスを訪れると大学の雰囲気が分かります。
- 先輩や先生から話を聞く
視野を広げるためにぜひやってみてほしいことです。身近な先輩や学校・塾の先生から大学について話を聞いてみてください。学校によっては卒業生から話を聞く機会を設けている学校もありますので、ぜひ参加してみてください。視野を広げるためにも、なるべくたくさんの人から話を聞くことがポイントです。ちなみに、あおい予備校ではチューターが受講生に対して自身が通う大学の紹介をしています。
4.大学選びのコツ
大学を調べることができたら、次は大学選びのコツをお伝えします。次のような考え方があります。
1)なりたい職業から選ぶ
すでになりたい職業がある方は、その仕事に就くために必要な資格が取得できたり、技術を修得できたりする大学・学部を選びましょう。例えば、医師だったら医学部、薬剤師なら薬学部、弁護士は法学部、学校の教員だったら教育学部、などです。(ただし、学校の教員は教員免許が取得できる学部であれば必ずしも教育学部である必要はありません。)まずは学部から考えていくと良いかもしれません。
2)「好きなこと」から選ぶ
なりたい仕事がまだ決まっていない、という方は「好きなこと」や「関心のあること」から選んでみましょう。本を読むことが好き、文章を書くことが好きであれば「文学系」、温暖化などの環境問題に興味がある、という方は様々な切り口があります(工学系、農学系、理学系)。環境問題のように広く一つの課題に興味がある方は、その中でも何に興味があるのか更に分析してみましょう。好きなことや興味のあることが分からない方は、本や新聞などを読んで興味のあることを探してみてください。
3)学費や立地から選ぶ
「お金」という現実的な側面から考える必要もあります。以下に各学校のおおよその学費を記載しておきます。
私立四年制大学(文系) 年額 80~150万円×4年間
私立四年制大学(理系) 年額120~180万円×4年間
国立大学(文系・理系) 年額 54万円×4年間
*参考*専門学校 年額 90~100万円×3年間
また、家から通いやすい場所にある、都心にあるなどの「立地」から選ぶ方法もあります。
他にも大学の規模(大規模だと選択肢が多い、小規模であれば教授との距離が近く面倒見が良い、など)から選ぶ方法などもあります。最近では時代に合わせて新設の学部を創設している大学もあります。ぜひ、様々な大学のHPを訪問して最新情報をチェックしてみてください。
5.自分に合う大学探しの旅に出よう
ここまで大学選びについてお話してきました。いかがでしたか。大学を取り巻く状況が変わっていることで、大学入試の状況や大学の学部も変わってきています。納得のいく大学に進学するためにも、なるべく高校1年生や2年生のうちに進路選択のための情報収集をしておきしましょう。また、進路の選択肢を広げるためにも日々の学習で基礎学力をつけておくことが大切です。
最後に大学選びにおいて最も大切なことを一つお伝えして終わりにします。
それは、「広い視野で考える」ということです。一度、「この大学に行きたい」と思うとその大学しか眼中になくなってしまうという状態になりがちです。
しかし、もしかするとあなたの将来の夢は、別の大学の方が叶えられるかもしれないです。別の学科を選んだ方が、あなたの望む研究に取り組みやすいかもしれません。
大学選びだけではありませんが、ぜひ、柔軟な思考で偏らずに色々な視点からご自身の進路を考えてみてください。
また、あおい予備校ではそんな大学探しの旅をお手伝いしています。悩んだら、まずはご相談ください。
この記事を書いた人:武田 菜穂子(あおい予備校校長)
早稲田大学大学院(政治学研究科)博士課程修了。上智大学大学院(現 グローバル・スタディーズ 国際関係論専攻)修了。上智では日本人初の国連難民高等弁務官 緒方貞子氏に師事。県立高校教諭、大手証券会社を経て有名塾・有名予備校講師を歴任。
予備校講師歴35年以上。日経新聞など各メディアへの出演も多数。これまでに指導してきた生徒はのべ20,000名以上※。生徒一人ひとりの個性を生かした進路指導に定評がある。
※一般・総合型選抜(旧AO)、各種推薦など