車田先生の「日々是世界史」(第1回 衆院議員選挙×イギリスの選挙法改正)
みなさん,初めまして。世界史を担当している車田恭一です。
今回から「日々是世界史」というタイトルで時事ブログを週一ペース程度で綴っていく事になりました。
日常生活を送っていると,ふとした出来事が歴史に関係している事が色んな場面で見受けられます。
そんなちょっとした出来事を,世界史の面から少しずつ紐解いてみようかなぁって感じで書き綴ってみようかと思っております。
予備校・高等学校の教壇に立って世界史の指導を始めて,気づけば30年以上も経ってしまいました。
今まで指導している中で気になった事や経験してきた事を軽ーい感じで,ちょっとは受験にも役立つ情報を盛り込みながら,書き綴りたいと思っているので,よろしくお願いします。
さーて,先月末に衆議院議員選挙が行われましたが,みなさん投票に行ったでしょうかね?
今回初めて選挙に行ったという高校生もいるんじゃないかな?
高校の生徒会役員選挙と比べていかがでしたか?私の次男坊も初めての選挙で,投票所に入って「キンチョーしたー」なんて,のたまわっておりました。
ということで,今回のテーマは「イギリスの選挙法改正」についてです。
イギリスでは,13世紀以降に議会が設置され,17世紀のピューリタン革命(1642~49年)・名誉革命(1688~89年)を経て立憲政治が発達していました。
しかし,選挙権はどうかといえば,限られたごく一部の地主・貴族に限定をされていたんです。
18世紀に産業革命が進展すると,産業資本家(工場の経営者など)が台頭して多額の税金を政府に納めるようになると,選挙権のないことに不満を高めた産業資本家層が選挙権(参政権)を要求するようになってきました。
なんせ参政権と課税は一対なものとして考えられるようになっていましたから。
例えば,アメリカ独立革命でも,植民地の住民が印紙法に対して「代表なくして課税なし」として猛反発が起こった事もありますしね。
19世紀に入ったイギリスでは,国内において自由主義改革が起こり,色々な改革が進められました。
選挙法の改正もその一つです。1832年にホイッグ党のグレイ内閣によって第1回選挙法改正が実施されると,都市の資本家(産業資本家)に参政権が与えられました。
改正前までは地主・貴族が参政権を独占していて,有権者の全国民に占める割合は,なんとたったの3%だったんです。
それで,改正によってどれくらいの割合になったかというと,4.5%に微増です。かなり少ないですよね!
第1回改正後,参政権が与えられなかった都市の労働者が,資本家だけが参政権を与えられた事に不満を持って,「労働者にも参政権よこせー」と参政権などを要求するチャーティスト運動が1830年代後半から起こりました。
1848年のフランス二月革命頃が運動のピークを迎えたのですが,1850年代末には自然消滅しました。
19世紀後半に入ると,1867年に第2回選挙法改正が,保守党のダービー内閣で成立すると,都市の工場労働者に参政権が与えられて有権者の割合は9%とまで拡大しました。(それでもまだ1桁台)
その後,1884年に自由党のグラッドストン内閣で第3回選挙法改正が成立して農業労働者・鉱山労働者に参政権が拡大しました。これで19%の割合です。
20世紀に入って,1914年に第一次世界大戦が起こると,各国が総力戦を展開したために女性が兵器工場などで労働し女性の社会進出が目立つようになった。
1918年,ロイド=ジョージ挙国一致内閣は,第4回選挙法改正を制定すると満21歳以上の男性,満30歳以上の女性に参政権が拡大しました。(それでも男女の年齢差がありますよね。しかも女性に無条件で参政権が与えられたわけではなく,女性本人もしくは夫が家屋所有している女性でなければならなったんです。なかなか厳しいです。)
これで46%の占有率になりました。(まだ半分もいってないんですけど…)
1928年に保守党のボールドウィン内閣でやっと満21歳以上の男女平等普通選挙となり,1969年に労働党のウィルソン内閣で満18歳以上になって,占有率が71%以上になりました。
因みに世界最初の女性参政権が与えられたのは,ニュージーランドで1893年のことです。自由なイメージのあるアメリカ合衆国は1920年です。(結構,遅いですよ)
さて,今回はイギリスの選挙法改正について,ざっくりと書いてみました。
いかがだったかな?今後もできる限り分かり易く世界史を身近なテーマと絡めて書き綴っていきたいと思います。
よろしくお願いします。
この記事を書いた人:車田恭一
30年以上にわたり教壇に立ち、都内私立高校、河合塾、Z会東大マスター、東進ハイスクール、早稲田塾、早稲田ゼミナールなど大手予備校で世界史を担当。当塾のブログで、タイムリーな話題と歴史的な出来事を絡めて綴った「車田先生の日々是世界史」を執筆中。