【校長ブログ】 第10回 志望理由書には何を書くべきなのか(その1)
※この記事は2021年5月31日、noteにて掲載したものを再編集しています。
コロナ禍で緊急事態宣言が延長となりましたが、受験生のみなさんは黙々と勉学に励まれ、総合型選抜を受験予定の方は、準備を本格化されている時期かと思います。
今回から2回にわたり、総合型選抜で最も重要な志望理由書についてお伝えします。
目次
多種多様な志望理由書
志望理由書(エントリーシート)は、大学によって書式も分量も様々です。800字程度の比較的短いものもあれば、2000字の長い分量が課される場合もあります。
「高校時代に力を入れてきたことは何か」
「本学で何を学び、将来にどのように生かしたいのか」
のように題意が比較的明確な大学もあれば、とくに何も指定がなく分量だけが指定されている大学も多いです。
一般的に言えば、志望理由書の分量が多い大学は、志望理由書に書かれてある内容がきわめて重要であって、書類選考の材料というだけではなく、その後の面接試験のポイントにもなります。
面接官が志願者に最も聞きたいのは「何を学びたいのか」であって、それは志望理由書に明確に書かれているはずです。
医療系のように国家資格を取るために大学に進学する場合であっても、「将来看護師になりたいので貴学を志望します」と書いてもあまり意味はありません。
看護を学べる大学はたくさんあり、なぜその大学なのかという理由が必要だからです。その大学のカリキュラムは何が特徴なのかを他大学と比較検討して、何が魅力なのかを明確にする必要があります。
ただし、このレベルであれば多くの志願者ができるのではないかと思います。志望大学のカリキュラムの特徴をふまえて学びたいことを書くのは、もはや常識だと思います。
問題はここからです。同じ大学・学部の志願者が特徴的なカリキュラムをあげ、それを志望理由とすれば、誰が書いても同じような志望理由書になってしまいます。差別化できる要素がないからです。
志望理由書を差別化するためには・・・
では差別化できる要素とは何でしょうか。
それは、志願者のこれまでの経験に裏付けられた問題意識であり、それはひとりひとり違っているからです。
「問題意識」とは、ある課題に対して主体的に関わろうとする心の持ち方であり、目標達成へのモチベーションともなることから、「目的意識」と言い換えることもできます。
大学は与えられた課題をこなす場ではなく、自分で課題を設定し、その課題に向けて学修計画を立てていく場です。総合型選抜の志望理由書で問われるのは、まさにこの問題意識に他なりません。
これは私が授業で時々話すことですが、大学というのは先人たちが築き上げてきた体系的知識を伝達することが目標のひとつです。
「経済原論」や「アメリカ文学史」といった「○○論」や「○○史」といった授業名がついているものがこれにあたります。
大学の講義は、こうした体系的知識を習得するにはきわめて効率的です。
例えば、アメリカ文学の名作リストをインターネットで検索することはできますが、サイトによってはかなりばらつきがあり、大学で英文学を学んだ私からすると少々疑問がわくリストがあったりします。
その意味で、大学の講義は、その分野の専門家たちによるお墨付きであって、間違いがないものです。
問題意識とプロセスを明確に
もちろん大学の役割はこれにとどまるものではありません。
大学は社会にとって有用な新しい「知」、問題解決に必要な新しい視点やアプローチを生み出す場だと思います。
こうした新しい視点やアプローチを生み出す原動力が「問題意識」です。
志望理由書を読む大学の先生方を納得させるには、志願者である皆さんがこれまでの経験からどんな問題意識を持つにいたったのか、そのプロセスを記すべきでしょう。
次回は、「学びたいこと」とは何を書くのか、お伝えします。
この記事を書いた人:武田 菜穂子(あおい予備校校長)
早稲田大学大学院(政治学研究科)博士課程修了。上智大学大学院(現 グローバル・スタディーズ 国際関係論専攻)修了。上智では日本人初の国連難民高等弁務官 緒方貞子氏に師事。県立高校教諭、大手証券会社を経て有名塾・有名予備校講師を歴任。
予備校講師歴35年以上。日経新聞など各メディアへの出演も多数。これまでに指導してきた生徒はのべ20,000名以上※。生徒一人ひとりの個性を生かした進路指導に定評がある。
※一般・総合型選抜(旧AO)、各種推薦など